双子はなにもかも同じだと思いこんでいたのに
突然私たちのちがいが見えてきた
(二つの井戸より)

美しい翠湖に住む河伯は、素質ある者が正しい方法で「水乞い」を行えば、その村や町に水をもたらしてくれます。
水がとても貴重な世界で、様々な場所での「水」と人との関わり方を描いたファンタジー。

繊細で美しい絵柄も特徴ですが、独特の世界観と、時には推理小説を思わせるほどに練られたストーリー。
一巻では水乞いする者と翡湖との関係に重きが置かれていましたが、話数が進むにつれ、「鬼人」(亜人)と「人」の関係を中心にした、世界観そのものをベースにしたものに内容がシフトしていますね。

コミックサイトぷら@ほ~むに最新話が掲載されています。
無料ですので、ぜひこの独特の世界観に触れてみてください。


と、ここまで言っておいてなんなんですが、この2巻の中で私が一番お薦めしたいのは、巻末の〔悪夢城の主〕。
手元の文庫版では出典が書かれていませんが、この話には鬼人も水乞いも翠湖も出てきません。
同じ世界の、違う場所の話と受け取ると違和感がないかもです。

戦争を終わらせ、意気揚々と故国に戻った将軍、ヨナン・ノブル。
しかし国に戻ってみれば、留守の間に妻は若い男と密通。王家の血筋だった妻はとがめを受けないまま、ヨナン・ノブルは辺境の領地「天損」へ実質左遷。
たどり着いた天損の城で予想外のもてなしを受けて喜ぶのもつかの間、それは現実の城ではなく、地元の者には「悪夢城」と恐れられる夢の中の城。
悪夢城で食べ物を口にしてしまったヨナン・ノブルは、今度は悪夢城の皇子の料理番として、夜な夜な夢の中で料理作りをさせられることになります。
新しい妻にも疎まれ、領民達にも恐れられ、いつしかヨナン・ノブルは料理番としての自分に歓びを見いだしていくのですが・・・

人の世の中にありがちな理不尽とか、切ないさとか、この作者さんの表現はとても絶妙です。文庫版の漫画と言うこともあり、ちょっとした隙間時間によく読み返しています。
同作者さんの、「百鬼夜行抄」もおすすめです。

河東ちかラノベなび