長兄は領地を相続すると、人が変わったように富に執着するようになった(中略)
あのまぶしいばかりの騎士姿はあっというまに色あせていった。ここは自分のいる場所ではない。大人になるときが来たのだ。(石の城 より)

Truth In Fantasy というシリーズに連なるこの作品。新紀元社らしく、資料的な価値の強い内容になっています。
主人公には「ジェラール」という架空の騎士が据えられていますが、これが騎士の生きた時代を描写するためのもので、ジェラールのドラマチックな生涯を描いている、というわけではありません。
それだけに、一般的な「ファンタジー」物語の夢のようなお話の根本には、こんな現実的な背景があるのだなと、とても参考になります。

淡々と描かれる「ジェラール」ですが、端々に描かれるジェラール視点の描写には、共感できるものが多いです。
最後はちょっと泣きました。

資料的な意味合いが強いので、ライトにファンタジー小説を読みたいという方には少し辛いかも知れません。
実際、資料として読み始めた自分も、最初の段階では休み休みの通読になりました。
でも、いったん読み終えて、おぼろでもこの物語の中に、たとえば「中世の暦」「一日の時間」「騎士叙任」などの説明がある、と判ってくると、今度は思い出したときにその項をじっくり読み直して、参考にすることができます。

まずは「もくじ」から自分の知りたい項目を探して、部分的に攻略していくのもいいかもしれません。

siinaipqi