「第一回、異界の文化を体験してみよう! 『家族食堂』編!」
「ぱふぱふぱふー」
「なんだその擬音は」
「異界でだしものするときに鳴らすラッパですー」
「なんだよその風習」
「終わったときは鐘を鳴らすのですー。面白ければ長い音楽で、面白くないときは一回か二回鳴って終わりなのですー」
「切なすぎねぇかそれ」

「それはともかく、今日は第一回ということで、異界の皆さんにはおなじみの『家族食堂(ファミリーレストラン)』というところに来てみました。すごいですね、壁に鏡がたくさんあって、ガラス細工の燭台がこんなに。貴族のお屋敷でも、こんなに広くて贅沢な部屋はないですよね」
「お城のばんさんかいのお部屋みたいなのですー」
「すげぇなぁ、これって、平民が利用する食堂なんだろ? この世界の生活水準ってどうなってんだ?」
「これでも、食堂としてはかなり格安な施設なんだそうですよ。皆さん、お城のようなお屋敷に住んでらっしゃるんでしょうか。想像つかないですよね」
「おいしいものがたくさんある世界なのですー」
「でも、『家族食堂』って名前の割に、家族連れほとんどいなくないか? 暇そうなおばちゃんの集団(グループ)とか、一人で光る石版とにらめっこしてる疲れた顔のおっさんとか」
「二人で来てるのに、手のひらくらいの大きさの光る石版ばっかり見ていて、会話も全然無い若い男女もいらしゃいますねぇ。『家族食堂』なんていうから、もっと和気藹々とした家庭的なお客さんばかりなのかと思ってたんですが」
「一人で本読みながら葡萄酒飲んでる女もいるなぁ……、どっかで見たような顔だなぁ……?」
「はやくおいしいものたべるのですー」
「あ、うんうん、じゃあ、お品書きを見てみようか」


「すげぇな、なんだこの品書き。こんなにつやつやで写実画みたいに色がついた絵が描いてある」
「ほんものそっくりなのですー」
「僕らはまだ『本物』を見たことがないですよ。それにしてもすごいですねぇ、異界には、レンズに映るものをそのまま絵にしてしまうような技術があるとは聞いてたんですが、どうやって色をつけるのでしょうね」
「しかも同じものが、あちこちのテーブルに揃ってるな。顔料代だけで城が建つんじゃねぇか?」
「じがよめないのですー」
「う、うん……、でも絵が精密だから、どれもみんな美味しそうに見えますね。値段は気にしなくてもいいって言われてますけど……」
「葡萄酒はあるんだな、麦酒も」
「あ、そうそう、こうしたところでは、お水は無料なんですよ」
「マジか? ちゃんと飲める水なのか?」
「そりゃあもう。安全さは、管理された井戸や山奥の湧き水と変わらないそうです。食べ物を売っているお店は、衛生管理に関しては理想的な配慮がなされてるそうですよ」
「いったいどういう世界なんだ……」
「あと、果実水やお茶なんかも、一定料金を支払えば飲み放題なんだそうです。さすがにお酒は、その都度料金がかかりますけど。ランジュ、注文が終わったら、飲み物をもらいに行こうね」
「みかんの果実水がよいですー」
「なら、早いとこ注文して酒をもらおうかな。しっかし贅沢だな、厚切り肉に、挽肉の団子に乾酪(チーズ)乗せたのとか……」
「僕は、このシチューにしようかな。パンもついているようですし」
「茶色いシチューってなんで出来てるんだろうな?」
「わたしはこれがいいですー」
「なんだ、ひとつの皿に随分いろんなものが載ってるんだな。飯の山にちっこい旗が立ってやがる。なんのまじないだ?」
「これは、子供用の献立みたいですね。こういう所では、子どもはとても優遇されているそうですよ」
「国の政策なのか? よっぽど子どもが少ないのか?」
「政策ではなく、お店側の販売戦略のようですよ。子供向けのものを安く提供するのは、『原体験』を与える目的があるみたいです」
「げん……?」
「子どものうちから、こういう施設になじませ、楽しいものだという認識を植え付ければ、おとなになっても通いますよね。子どもと来るところだと思いこんでいれば、いずれ自分の子どもも連れて来るでしょう。その繰り返しを狙っているんじゃないでしょうか」
「へぇ……、その割にガキいねぇけどな……」
「そうですね……」
「わたしはこどもなので、こどものぷでぃんぐもたべたいですー」
「こどもなのは見た目だけだろ」
「人はみためがだいじなのですー」
「ある意味真実なのが嫌ですよね……」



つづく(かもしんない


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